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スタッフレポートA

〜どこへ向かっている?〜 

神奈川大学4年 磯部 紀子 

 
芸術の秋なんてベタだが、今回私のテーマは「知的な気分」で。「近美100年の会」の、紅葉狩りハイキングに参加する。
 紅葉シーズン真只中の11月、最後の日曜日。人混みに知的な気分も吹っ飛び、早足で建長寺に向かう。しばらくして、北鎌倉の自然の中にスケールの大きな寺社が現れてくる。整えられた庭や法堂と野味のある山々の緑が一体となって、秋の紅葉から冬の景色へと移ろっていく。・・・知的な気分が再燃してきた。
 暗い法堂で説明を受けながら天井絵を拝見する。戸の隙間から外の光がうっすらと入る堂内の天井に鮮やかな竜が浮かび上がる。やはり、こういうものは薄暗さによって引き立つものである。目を凝らし、しげしげと見上げると、まるで向こうもこっちを睨んでいるようだ。
 境内の登山口よりハイキングに向かう。途中「やぐら」と呼ばれる墓跡を見学しながら自然に親しむ。鎌倉は山に囲まれた地形により平地が少ないため、山壁に横穴が掘られ、内部を墓所として利用していた。横穴は、内側に軸組で木枠が組まれていたらしい。あるものは垂木の跡が残っていて、遺跡ではなく何百年もの時代を飛び越えて会ってしまったような気にさせられる。
 いくつか名所を見学した後、近代美術館に到着する。「チャペック兄弟とチェコアバンギャルド展」が催されている。近代の書籍の装丁に対し、アートとしての再評価がされているなか、このチャッペック兄弟とその周囲の人々の作品は、現代のデザインの端々にその流れをみることができる。おもわず「こんなのいいな、イタダキ。」と、色々妄想が膨らんできた。今という時代に、タイムリーな魅力を持っている。
 そのような時代の空気感をうつすアートや木々の緑が似合う美術館。美術館自体がそんな背景を持っている。オープンエアの中庭をベースにうろうろして、設計者の坂倉準三や、同時代を生きた人々を考える。戦後から続く西洋指向のなかで、日本的なものへの再評価が行われた。坂倉は、この自然環境に恵まれた美術館でそれを表現している。
 新しい建築の流れを模索し、日本におけるモダニズムを実践していった彼らは、何を目指していたのか、それをふまえて私たちは何処に向かっていこうとしているのか、そんなことを思いおこさせる美術館は他では替えがたい。何もかもを切り捨てていくことがベストではないということを、この建築が既に私たちに訴えかけている。もちろん、歴史的背景を持っているという意味合いだけではなく、この空間が愛おしい。ここでは、いつのまにか静かになってしまう。萎縮するのではなく、各々がなんとなしにぼーっとしたり、考えに浸ったりする。
 子供が、騒ぐでもなくイサム・ノグチの作品と戯れている。喧噪が似合わないことを空間が自然に教えてくれるのだ。
 翌々日、ハイキングのなごりの筋肉痛が襲ってくる。芸術の秋はどこへ・・・。



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