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「小川待子展について」

柳澤 雅子/ICE 都市環境照明研究所



今、神奈川近代美術館で<Li2O・NaO・CaO・Al2O3・SiO2 呼吸する気泡>という一見難しい化学式に見える陶芸家の作品展が開催されています。小川待子さんというその陶芸家と、私の事務所の所長の知人の方がお知り合いだったことが縁で、数年前から彼女の個展は、所長が照明を担当させてもらうようになりました。今回は住まいが近いということもあり、私もシューティングをお手伝いさせて戴きました。

これまでは来館者でしかなかった鎌倉の近代美術館。天高が高く、工事現場で見るような足場組みの脚立でなければ届かない配線ダクトに、まさしく一灯一灯明かりを灯す所長を、下からサポートしただけではありましたが、束の間、近美の裏方役という希有な機会に恵まれた偶然を享受し、いままで感じなかった近美のもうひとつの姿に触れることができたような気が致します。

小川さんの作品は、揺るぎない塊としての強さ、凛とした美しさを持っており、たおやかな彼女のどこに、このパワーは秘められているのだろう?とひとつひとつの作品に光を当てる度に思い巡らせました。中でも圧巻は、吹き抜けの大きな窓越しに蓮池が見える新館1Fの展示室です。そこはあたかも蓮池のこちら側に、もうひとつの澄んだ水面が現われたかのような空間が出現しています。借景という言葉がありますが、ここはまさに風景と作品が見事に調和した情景が広がっています。ここには一切スポットの光を投げませんでした。うつろいゆく陽光の中で、命ある土の破片がエメラルド色のもうひとつの水面に、刻々とその姿を変えゆく様を見せたかったからです。どんな照明器具より優れた光が、この美術館には存在することを、夕暮れから藍色に変わりゆく時間の中で私は噛み締めていました。

晩夏の昼下がり、お時間がありましたら、鎌倉迄足を運んでみてください。蓮池を渡る清清しい風を背景に、ぽつぽつと語りかけてくるような作品達が迎えてくれます。

 


寄稿された記事、コメント その他記事
「JIA機関誌『Bulletin』のほぞんもんだい記事」 pdfファイルで開きます。

「古都・鎌倉と深く調和した戦後日本を代表する建築」(林 昌二氏) 
  出展:建築ジャーナル2003 01 NO.1040より(2003.06.13)

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